休職してから5カ月ほど経ったころ、診断が「うつ状態」から「うつ病」に変わりました。
とはいっても、その日は何か特別な検査をしたわけでも、改まって説明を受けたわけでもありません。いつもの診察の流れの中で、先生からさらっと告げられました。
「ずっと自分を否定したり、責めているように見える」
そんなことを言われたのを覚えています。
当時の私は、自分が病気だという感覚よりも、「ただサボっているだけなんじゃないか」「楽をしたいだけなんじゃないか」という思いのほうが強くありました。仕事を休んで家にいるのに、思うように動けない。時間はあるはずなのに、できないことがたくさんある。その状態を誰より厳しく見ていたのは、たぶん自分自身だったのだと思います。
少しずつ動けるようにはなっていた
休職したばかりのころと比べれば、できることは少しずつ増えていました。
一時期はほとんどできなくなっていた料理も、また少しずつ作れるようになっていました。頭の中で物事を考えたり、何かを決めたりすることも、以前よりは進むようになっている感覚がありました。
だから自分では、「このまま少しずつ戻っていくのかな」と思っていました。
ただ、眠れないことだけはずっと残っていました。夜になっても自然に眠れず、睡眠薬がないと眠れない日が続く。昼間に少し動けるようになったことで、回復しているつもりになっていたけれど、夜になるとまだ全然違う場所にいるような感覚がありました。
良くなっている部分は確かにある。でも、良くなっていない部分も同じくらい残っている。今振り返ると、その頃はそんな時期だったのだと思います。
「うつ病」と言われて、ショックと安心が同時にあった
先生から「うつ病」と言われたとき、最初はやはり少しショックでした。
「うつ状態」という言葉よりも、「うつ病」という言葉のほうが重く聞こえたからだと思います。自分が世間でいうところの「うつ病になった人」になったような感覚もありました。
その一方で、不思議と少し安心した自分もいました。
それまで私は、休んでいるのに動けないことも、眠れないことも、自分の性格や甘えの問題として考えていました。だから、病名がついたことで初めて、「全部を自分のせいにしなくてもいいのかもしれない」と思えたのだと思います。
もちろん、診断名がつけば何でも許されるという話ではありません。それでも、ずっと自分を責める方向にしか向かなかった考え方に、別の見方がひとつ加わった感じはありました。
ちなみにそのときの私は、「薬、変わるのかな」なんて、少し呑気なことも考えていました。ショックを受けながらも、どこかではまだ実感が追いついていなかったのかもしれません。
「まだ休んでいていい」と思えた
診断が変わったからといって、翌日から生活が大きく変わったわけではありません。
眠れない日は続きましたし、朝も思うようには起きられませんでした。休職期間が長くなるほど、「もうこんなに休んでいるのに」という焦りもありました。
ただ、「うつ病」と言われたことで、その焦りが少しだけ和らぎました。
早く元に戻らなければ、ではなく、まだ休んでいていいのかもしれない。そう思えるようになったことは、自分の中では意外と大きな変化でした。
それまでは、うつ病で休んでいる人や長く治療している人の話を見ても、どこか自分とは離れた話として読んでいた気がします。でも、自分にも同じ病名がついてからは、その人たちの話に以前より気持ちを寄せるようになりました。
外から見れば何もしていないように見えても、本人の中ではずっと何かと戦っていることがある。自分がそうなって、ようやく少し分かったことでした。
さらに3カ月たって、見え方がまた変わった
この診断変更から、さらに3カ月ほど経ちました。
今の自分から当時を振り返ると、あの頃は自分が思っていたほど回復していなかったように感じます。
料理ができるようになった。少し考えられるようになった。それだけで「だいぶ良くなってきた」と思っていたけれど、回復はそんなに単純なものではありませんでした。
できることが増える日もあれば、思うように動けない日もある。少し前に進んだと思ったあとで、また同じところに戻ってきたように感じる日もありました。
当時の私は、その波をまだうまく理解できていなかったのだと思います。
診断名が変わったことで何かが解決したわけではありません。それでも、あの日から少しだけ、「治さなければ」という気持ちよりも、「まだ休んでいてもいい」という気持ちのほうへ傾きました。
今思えば、それもまた、回復そのものとは別のところで必要だった変化だったのかもしれません。



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